エンロンとコーポレートガバナンス
2001年12月2日、 エンロンは、会社更生をニューヨーク地区連邦裁判所に申請した。わずか数ヶ月前までは全米上場企業上位10社のうちの一つであった企業である。エンロンの崩壊は米大企業の経営上の倫理問題について活発な論議をよび、広範囲な法律の改正のきっかけとなったのである。
6月24日、ローレンスレペタ教授は、”エンロンとコーポレートガバナンス”というテーマでEnronが倒産するにいたるまでの複雑な経過を大宮法科大学院の最新の視聴覚機器を駆使し、膨大な写真、図表、時事漫画などを大画面で示しながらプレゼンテーションを行い、学生とワークショップの機会をもった。
この強大な企業の崩壊は、ビッグファイブと呼ばれる大手会計事務所のひとつとテキサス州ヒューストンにあるもっとも格式の高い(かつ費用のかかる)法律事務所の助言と協力による複雑な不正会計や不正取引の結果であった。
レペタ教授のプレゼンテーションは、いわゆる“ゲートキーパー”と呼ばれる弁護士の役割や監査法人、リサーチアナリスト、証券取引委員会が著しい株価の吊り上げという構造的な不正行為を摘発し防止することができなかったという失敗とそれによる崩壊に焦点を絞ってなされた。
なぜアメリカのコーポレートガバナンス制度や規制がこの倒産にいたる経緯を見過ごしてしまったのかという全般的な疑問が検討された後、将来再び同じことが起こる可能性についての問いかけに議論は移った。
Enron事件をきっかけとして将来の再発防止のために法律や規制における数々の改正が行われた。そしてその改正でもっとも重要なものが 1930年代以来の“連邦証券法における最も大きな改革”とたびたび称されるサーベンス・オクスレー法であることは言うまでもない。複雑な法律であるにも関わらず改革を求める非常に強い声により上院で99対0、下院で423対3という圧倒的な賛成多数で2002年7月に法案が通過し、その数日後にブッシュ大統領が署名した。また弁護士に対する倫理規制や上場基準、また証券取引委員会の規制についての改正も行われた。
ワークショップの参加者たちはカリフォルニア大学(UC)が倒産による損害賠償を求めて行った大規模なクラスアクション(集団代表訴訟)についても検討を行った。
2005年6月現在、カリフォルニア大学及びその他の原告は、エンロン詐欺のそれぞれの局面において関与した投資銀行、取締役及びその他の被告から既に50億ドルに近い賠償を受けている。そしてこの訴訟は未だ継続中である。
金曜の夜に大宮法科大学院の50名もの学生がプレゼンテーションに参加したことは、将来日本法にも影響を与えるであろうこの問題についての最近の展開を理解したいという学生の強い意欲の現れを示すものである。
編集後記
さて、ほぼ1年ぶりの更新になってしまいました。 新校舎への引っ越し、そして2学年の学生を擁しての新年度開始、高揚感と若干の戸惑いとで年度の半分が過ぎてしまったというところでしょうか。 2年生達は折り返し点を通過し本学での生活の後半を迎えようとしています。 今後も彼らをしっかりと支え、また彼らに支えられて日々闘っていきたいと考えています。
2005.09.02 広報委員長 田中 宏
